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糖尿病の本当の怖さは「合併症」にあり。~三大合併症の初期症状と予防法を内科医が解説~

[2026.06.11]

「健康診断で血糖値が高いと言われたけれど、どこも痛くないから大丈夫」「糖尿病と診断されたけれど、薬を飲むのが面倒で放置している」という方はいらっしゃいませんか。

糖尿病という病気の本当の恐ろしさは、血糖値が高い状態そのものよりも、それによって引き起こされる「合併症」にあります。糖尿病は初期段階ではほとんど自覚症状がありません。しかし、自覚症状がないからと放置している間に、全身の血管や神経が静かに、そして確実にむしばまれていく病気なのです。

本記事では、糖尿病の三大合併症と呼ばれる代表的な障害、それぞれの初期症状、そして合併症を防ぐために最も重要な対策について、内科医の視点から詳しく解説します。

必ず知っておくべき「糖尿病の三大合併症」とは?

高血糖の状態が続くと、全身の細い血管(毛細血管)がダメージを受け、血流が滞るようになります。特にもろい血管が集まっている「神経」「目」「腎臓」の3つの場所に現れる障害を、それぞれの頭文字をとって「し・め・じ」と呼び、糖尿病の三大合併症と位置づけています。

し:神経障害(しんけいしょうがい)

三大合併症の中で、最も早い段階から現れやすい症状です。高血糖によって末梢神経や血管が傷つくことで発症します。

  • 初期症状: 手足の先、特に「足の指先や裏」にピリピリ・チクチクとしたしびれや痛み、冷え、あるいはベールを一枚被ったような感覚の鈍さが現れます。

  • 放置するリスク: 感覚が鈍くなると、靴擦れや怪我、火傷をしても痛みに気づけなくなります。糖尿病による免疫力低下も加わり、小さな傷から細菌が感染して化膿し、最悪の場合は足の組織が腐る「壊疽(えそ)」へと進行して足を切断せざるを得なくなることもあります。

め:網膜症(もうまくしょう)

目の奥にある「網膜」という、光を感じる神経の膜に張り巡らされた細い血管が詰まったり破れたりする病気です。

  • 初期症状: 初期から中期にかけては完全に「無症状」です。かなり進行してから、目がかすむ、視力が落ちる、視界に黒いゴミのようなものが飛ぶ(飛蚊症)といった症状が現れます。

  • 放置するリスク: 網膜の破壊が進むと、ある日突然眼底出血を起こし、急激に視力を失うことがあります。日本の成人の失明原因において、糖尿病網膜症は常に上位を占めています。

じ:腎症(じんしょう)

血液中の老廃物をろ過して尿を作る「腎臓」の機能が低下する病気です。腎臓には「糸球体」という非常に細い血管の塊があり、ここが高血糖のダメージをダイレクトに受けます。

  • 初期症状: こちらも初期には全く自覚症状がありません。尿検査で「微量アルブミン(初期の蛋白尿)」が検出されることで初めて分かります。病気が進行すると、体がむくむ(浮腫)、疲れやすい、息苦しいといった症状が出ます。

  • 放置するリスク: 腎臓の機能が完全に失われると、自力で毒素を排出できなくなり、生命を維持するために機械で血液をきれいにする「人工透析(じんこうとうせき)」を一生涯、週に数回受け続けなければならなくなります。

太い血管が詰まる「大血管障害(脳梗塞・心筋梗塞)」

糖尿病の合併症は、細い血管だけでなく、脳や心臓へとつながる「太い血管」の動脈硬化も急速に進行させます。これを「大血管障害」と呼び、代表的なものに以下の2つがあります。

  • 脳梗塞(のうこうそく): 脳の血管が詰まり、半身の麻痺や言語障害などの後遺症が残ったり、命に関わったりします。

  • 心筋梗塞(しんきんこうそく)・狭心症: 心臓に酸素を送る血管が狭くなったり詰まったりして、激しい胸の痛みに襲われます。糖尿病の人は神経が鈍くなっていることがあるため、心筋梗塞を起こしても胸が痛まない「無痛性心筋梗塞」になる危険があり、発見が遅れがちです。

合併症の発症・進行を防ぐために大切なこと

糖尿病の合併症は非常に恐ろしいものですが、正しく向き合えば、発症を防ぐことも、進行を食い止めることも十分に可能です。

徹底した血糖管理(コントロール)

何よりも基本となるのは、日々の血糖値を適切な範囲に維持することです。過去1〜2ヶ月の血糖の平均値を示す「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」という数値を、合併症予防の目安である「7.0%未満」に保つことが目標となります。食事療法、運動療法をベースに、必要に応じて適切な内服薬やインスリン注射を行います。

定期的な検査(症状がなくても受ける)

合併症の多くは、症状が出てからでは手遅れになることが多いです。そのため、症状がなくても以下の定期検査を必ず受けましょう。

  • 定期的な血液・尿検査: 腎臓の機能をチェックします。

  • 年1回以上の眼科受診: 内科だけでなく、眼科での眼底検査が不可欠です。

  • 毎日の足の観察: 入浴時などに、自分の足に傷やタコ、水虫ができていないかチェックする習慣(フットケア)をつけましょう。

まとめ

糖尿病治療の究極の目的は、血糖値を下げることそのものではなく、「合併症を防ぎ、健康な人と変わらない充実した人生を送ること」にあります。

「痛くないから」「まだ若いから」と治療を先延ばしにすることは、将来の自分の目や腎臓、手足を危険にさらすことと同義です。

当院では、糖尿病の初期診断から、一人ひとりのライフスタイルに合わせた無理のない血糖管理、合併症の定期的な評価まで総合的な生活習慣病診療を行っております。健康診断で指摘を受けた方や、手足のしびれなど気になる症状がある方は、深刻な合併症へ進行してしまう前に、どうぞお早めに当院へご相談ください。

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