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深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)の脅威~内科医が教える原因・症状・予防策~

[2026.05.12]

「エコノミークラス症候群」という名称は、多くの人が一度は耳にしたことがあるでしょう。しかし、これが飛行機の中だけでなく、日常生活のあらゆる場面で発生し、最悪の場合は命に関わる重大な病気であることは意外と知られていません。

医学的には「深部静脈血栓症(DVT)」、およびそれに続く「肺血栓塞栓症(PTE)」と呼びます。本記事では、内科クリニックの視点から、この病気のメカニズム、見逃してはいけないサイン、そして命を守るための予防法について詳しく解説します。

深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)とは

私たちの体には、心臓から全身へ血液を送る「動脈」と、心臓へ血液を戻す「静脈」があります。足の深いところを通る静脈に、血の塊(血栓)ができてしまう状態を「深部静脈血栓症」と言います。

なぜ命に関わるのか

問題は、足でできた血栓が血流に乗って移動することにあります。移動した血栓が肺の血管(肺動脈)に詰まってしまうと「肺血栓塞栓症」を引き起こします。肺はガス交換を行う重要な臓器であるため、大きな血栓が詰まると、突然の呼吸困難や心停止を招く非常に危険な状態となります。

血栓ができる3つの主要因

血栓ができる原因には、医学的に「ヴィルヒョウの3要素」と呼ばれる3つの条件があります。

① 血流の停滞(静脈血流のうっ滞)

長時間、同じ姿勢で座り続けると、足の筋肉によるポンプ作用が働かず、血液が停滞します。これが「エコノミークラス症候群」と呼ばれる所以です。飛行機以外でも、長時間のデスクワーク、長距離ドライブ、災害時の車中泊、さらには入院による長期臥床などがリスクとなります。

② 血液の性状の変化(血液凝固能の亢進)

血液が固まりやすい状態にある場合です。脱水症状(水分不足)により血液の粘度が高まることや、がん、妊娠・出産、経口避妊薬(ピル)の服用、喫煙などがこれに該当します。

③ 血管壁の損傷

手術や骨折などの外傷、カテーテル治療などによって血管の壁が傷つくと、そこを修復しようとする過程で血栓ができやすくなります。

見逃してはいけない初期症状

深部静脈血栓症は、初期段階で気づき、対処することが何よりも重要です。

足に現れるサイン(深部静脈血栓症の段階)
  • 片側の足の腫れ: 最も特徴的な症状です。両足ではなく、左右どちらか一方が明らかに太くなります。

  • ふくらはぎの痛み: 歩行時に痛みを感じたり、手で押すと強い痛み(圧痛)を感じたりします。

  • 皮膚の色・温度の変化: 足が赤黒くなったり、熱感を持ったりすることがあります。

肺に飛んだ時のサイン(肺血栓塞栓症の段階)

血栓が肺に移動すると、以下のような緊急事態が生じます。

  • 突然の激しい息切れ、呼吸困難

  • 胸の痛み

  • 冷や汗、動悸

  • 失神(意識を失う)

これらの症状が出た場合は、一刻を争うため、迷わず救急車を要請してください。

内科クリニックで行う検査と診断

「足が腫れている」「違和感がある」と受診された場合、当院では以下のプロセスで診断を行います。

  1. 問診・視診: リスク因子の確認(最近の旅行、手術、持病など)と、左右の足の太さの計測を行います。

  2. 血液検査(D-ダイマー): 体内で血栓が作られたり溶けたりした際に発生する物質の量を測定します。この値が低い場合は、血栓症の可能性を大幅に否定できます。

必要に応じて、 下肢静脈超音波検査(エコー)やCT検査が可能な連携病院を紹介し、詳しく精査します。

日常でできる予防の5箇条

エコノミークラス症候群は、事前の対策で十分に防ぐことができる病気です。

🟣こまめな水分補給: 血液をサラサラに保つため、意識的に水を飲みましょう。アルコールやカフェインは利尿作用があり、脱水を招くため注意が必要です。

🟣定期的な運動: 1時間に一度は立ち上がって歩くか、座ったままでも「かかとの上げ下げ」「足首回し」を行い、ふくらはぎのポンプを働かせましょう。

🟣ゆったりとした服装: お腹や足の付け根を強く締め付ける服は、血流を阻害します。

🟣禁煙: 喫煙は血液を固まりやすくさせ、血管を傷つける最大の敵です。

🟣弾性ストッキングの活用: リスクが高い方や長時間の移動時には、適度な圧力を加える着圧ソックスが有効です。

まとめ:違和感があれば早めにご相談を

深部静脈血栓症は、誰もが発症する可能性がある一方で、その恐ろしさが正しく認識されていない疾患でもあります。特に、生活習慣病(高血圧、糖尿病など)がある方や、高齢者の方はリスクが高まります。

「ただの足のむくみだろう」「少し筋肉痛かな」と自己判断せず、左右で明らかに腫れ方が違う場合や、持続する違和感がある場合は、内科クリニックにご相談ください。早期発見と早期治療(抗凝固療法など)によって、肺塞栓症という最悪の事態を防ぐことができます。

あなたの足の健康を守ることは、命を守ることにつながっています。

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