2025年1月blog
花粉症が始まりました!~アレルギー検査~
2025年のスギ花粉シーズンが近づいています。東京都では、1月8日にスギ花粉の飛散が観測され、統計開始以来最も早い飛散開始となりました。
飛散量は昨年と同程度、例年(過去10年平均)の1.2倍程度と予想されています。特に多摩地域では例年の1.3倍程度の飛散が見込まれています。飛散のピークは2月中旬から3月上旬と予想されており、早めの対策が重要です。
花粉症の症状を軽減するためには、マスクやメガネの着用、室内の換気や掃除などの基本的な対策に加えて、自身のアレルギー原因を正確に知ることが効果的です。当院では、ドロップスクリーン検査を導入しております。この検査は、指先からわずか1滴(約20μL)の血液を採取し、約30分で41種類のアレルゲンに対する反応を調べることができます(検査結果はお待ちいただいても、メールにて結果送付もできます)。内科部門|新宿で耳鼻科・内科をお探しなら新宿内科耳鼻科クリニック
注射器を使わないため、小さなお子様や注射が苦手な方でも安心して受けていただけます。
ドロップスクリーン検査の主な特徴は以下の通りです:
- 迅速な結果提供:検査後、約30分で結果が得られるため、その日のうちに診断と治療方針の決定が可能です。
- 低侵襲:指先からの微量な採血のみで済むため、患者様の負担が少なく、特にお子様にも適しています。
- 多項目検査:花粉やハウスダスト、食物アレルギーなど、41種類のアレルゲンを一度に検査できます。
花粉症の症状がある方や、アレルギーの原因を特定したいとお考えの方は、ぜひ当院でのドロップスクリーン検査をご検討ください。早期の検査と適切な対策で、花粉シーズンを快適に過ごしましょう。
心房細動の抗凝固療法:最新研究が示す新たな選択肢
心房細動の抗凝固療法:最新研究が示す新たな選択肢
心房細動(AF)は、脳卒中リスクを高める代表的な不整脈の一つです。このため、血液をサラサラにする抗凝固薬(血液凝固を抑える薬)が広く使われています。しかし、抗凝固薬には「出血リスクを伴う」という課題があり、治療の選択は慎重に行われなければなりません。
今週、New England Journal of Medicine (NEJM) に掲載された最新研究では、現在主流となっている**リバーロキサバン(Rivaroxaban)と、新たな抗凝固薬候補であるアベラシマブ(Abelacimab)**を比較し、その安全性を検証しました。この研究結果は、将来の心房細動治療において重要な示唆を与えるものです。今回は、この研究をもとに「心房細動の抗凝固療法の最新事情」について、わかりやすく解説します。
抗凝固薬の役割と現在の主流
心房細動では、心臓の中に血の塊(血栓)ができやすくなり、それが脳に飛ぶと脳梗塞(脳卒中)を引き起こすことがあります。これを防ぐために、抗凝固薬が用いられます。
現在、日本や欧米で広く使用されている抗凝固薬には以下の種類があります:
- ワルファリン(Warfarin)
- 長年使用されているが、食事や他の薬との相互作用が多い
- 血液検査でのモニタリングが必要
- 直接経口抗凝固薬(DOAC)(ダビガトラン、アピキサバン、リバーロキサバンなど)
- モニタリングが不要で使いやすい
- ワルファリンに比べて出血リスクが低いとされる
このうち、リバーロキサバンは比較的多くの患者に処方されている薬の一つです。
NEJMの最新研究「Abelacimab vs. Rivaroxaban」のポイント
この研究では、心房細動を持ち、脳卒中リスクが中〜高程度の患者 1,287名を対象に、以下の3つのグループに分けました。
- アベラシマブ 150mg(月1回の皮下注射)
- アベラシマブ 90mg(月1回の皮下注射)
- リバーロキサバン 20mg(1日1回の経口投与)
アベラシマブは、「血液凝固因子XI(ファクターXI)」の活性化を阻害するモノクローナル抗体です。血栓形成を防ぎつつ、出血リスクを抑える新しいメカニズムが期待されています。
研究の主要な評価項目は**「大出血または臨床的に重要な出血の発生率」**でした。
驚きの結果:アベラシマブは出血リスクを大幅に低減
3ヶ月の追跡期間で、出血リスクの比較を行った結果:
- リバーロキサバン群:8.4件 / 100人年
- アベラシマブ 150mg群:3.2件 / 100人年(リバーロキサバンの約62%減)
- アベラシマブ 90mg群:2.6件 / 100人年(リバーロキサバンの約69%減)
つまり、アベラシマブはリバーロキサバンと比べて、大出血リスクを約60〜70%低減させたことになります。
この研究結果を受けて、独立したデータモニタリング委員会は「アベラシマブの出血リスク低減効果が予想以上に大きい」と判断し、予定よりも早く試験を終了することを決定しました。
さらに、副作用の発生率も3つのグループ間で大きな違いはなく、安全性に大きな懸念はないことが確認されました。
この研究が示唆すること
✅ 新たな抗凝固薬の可能性
アベラシマブは、出血リスクを大幅に低減しつつ、脳卒中予防の効果を維持できる可能性があります。従来の薬よりも安全性の高い選択肢となるかもしれません。
✅ 経口薬 vs 皮下注射:どちらが良い?
現在の抗凝固薬は経口薬が主流ですが、アベラシマブは月1回の皮下注射で済むため、「飲み忘れ」などのリスクを減らせるメリットがあります。一方で、自己注射が必要になるため、その点が課題となるかもしれません。
✅ 今後の課題
今回の研究では、アベラシマブの長期的な有効性や、脳卒中予防効果はまだ完全には証明されていません。また、出血リスクが低いことは確認されましたが、「血栓が本当に十分に抑制されるのか」という点は、さらなる研究が必要です。
まとめ
今回のNEJMの研究では、アベラシマブがリバーロキサバンに比べて大出血リスクを大幅に減少させることが確認されました。
しかし、長期的な安全性や脳卒中予防効果が完全に確立されたわけではないため、今後の大規模試験の結果が待たれます。
もし将来的にアベラシマブが臨床の場で広く使われるようになれば、心房細動の患者さんにとって**「より安全で使いやすい抗凝固療法」**が実現するかもしれません。
心房細動の治療は日々進歩しており、新しい選択肢が増えてきています。医師と相談しながら、自分に合った抗凝固療法を選ぶことが大切です!
睡眠時無呼吸症候群(OSA)と認知症の発症に関係あり!? ~最新研究論文から見るリスクと対策~
近年、注目を集めているのが、睡眠時無呼吸症候群(OSA)と認知症の関係です。OSAとは、睡眠中に気道が塞がれ、呼吸が一時的に止まる病気で、日中の強い眠気などを引き起こします。欧米化した生活習慣や肥満の増加により、OSAの患者数は増加傾向にあります。
OSAは認知症のリスクを高める!
最新の大規模研究(Thorax 2024年12月16日発表)によると、OSAのある人は特に血管性認知症のリスクが高まることがわかりました。200万人以上のデータを分析した結果、OSA患者は血管性認知症の発症リスクが約29%高かったのです。一方で、アルツハイマー病については明確なリスク上昇は確認されませんでした。
CPAP療法がリスク軽減のカギに?
OSAの治療法であるCPAP(持続陽圧呼吸)療法を受けている人は、認知症のリスク上昇が見られませんでした。これは、CPAP療法がOSAによる夜間の低酸素状態を改善し、脳へのダメージを防ぐ可能性を示しています。ただし、治療を受けている人は全体のわずか3.4%であり、広く治療が行き渡っていない現状も課題です。
特に注意が必要なのは中年男性!
研究では、40歳以上の男性でOSAと認知症リスクの関係が特に強いことが示されました。「いびきがうるさい」「日中にうたた寝をする」といった症状がある場合、早めに医療機関での検査を受けることが大切です。
早期発見と対策が重要
OSAは適切な治療でコントロールできる病気です。特にCPAP療法は、認知症予防にもつながる可能性があるため、OSAの疑いがある場合は早期に診断・治療を受けましょう。また、OSA患者には定期的な認知機能のチェックもおすすめです。
質の良い睡眠を確保し、心身の健康を守ることが、認知症予防の第一歩です。自分自身や家族の健康のために、ぜひOSAについて関心を持ってみてください。
当院内科では睡眠時無呼吸症候群の診断と治療を積極的に行っております。お気軽にご相談ください。