呼吸器内科blog
睡眠時無呼吸症候群(OSA)と認知症の発症に関係あり!? ~最新研究論文から見るリスクと対策~
近年、注目を集めているのが、睡眠時無呼吸症候群(OSA)と認知症の関係です。OSAとは、睡眠中に気道が塞がれ、呼吸が一時的に止まる病気で、日中の強い眠気などを引き起こします。欧米化した生活習慣や肥満の増加により、OSAの患者数は増加傾向にあります。
OSAは認知症のリスクを高める!
最新の大規模研究(Thorax 2024年12月16日発表)によると、OSAのある人は特に血管性認知症のリスクが高まることがわかりました。200万人以上のデータを分析した結果、OSA患者は血管性認知症の発症リスクが約29%高かったのです。一方で、アルツハイマー病については明確なリスク上昇は確認されませんでした。
CPAP療法がリスク軽減のカギに?
OSAの治療法であるCPAP(持続陽圧呼吸)療法を受けている人は、認知症のリスク上昇が見られませんでした。これは、CPAP療法がOSAによる夜間の低酸素状態を改善し、脳へのダメージを防ぐ可能性を示しています。ただし、治療を受けている人は全体のわずか3.4%であり、広く治療が行き渡っていない現状も課題です。
特に注意が必要なのは中年男性!
研究では、40歳以上の男性でOSAと認知症リスクの関係が特に強いことが示されました。「いびきがうるさい」「日中にうたた寝をする」といった症状がある場合、早めに医療機関での検査を受けることが大切です。
早期発見と対策が重要
OSAは適切な治療でコントロールできる病気です。特にCPAP療法は、認知症予防にもつながる可能性があるため、OSAの疑いがある場合は早期に診断・治療を受けましょう。また、OSA患者には定期的な認知機能のチェックもおすすめです。
質の良い睡眠を確保し、心身の健康を守ることが、認知症予防の第一歩です。自分自身や家族の健康のために、ぜひOSAについて関心を持ってみてください。
当院内科では睡眠時無呼吸症候群の診断と治療を積極的に行っております。お気軽にご相談ください。
マイコプラズマ肺炎とは?症状、診断、治療について。
マイコプラズマ肺炎とは?
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマという細菌が原因で起こる肺の感染症です。普通の風邪や他の肺炎と似た症状が出ますが、比較的若い人がかかりやすく、特に職場などで広がりやすいのが特徴です。
主な症状
マイコプラズマ肺炎の症状は、軽い風邪のようなものから始まり、徐々に悪化していくことが多いです。以下のような症状が現れます。
-
咳(特に乾いた咳) 最初は軽い咳ですが、次第に強くなり、特に乾いた咳が続くことが多いです。夜間に咳がひどくなることもあります。
-
発熱 高熱が出ることは少ないですが、37~38度程度の熱が続くことがあります。
-
喉の痛みやだるさ 喉が痛くなったり、全身がだるく感じることがあります。
-
胸の痛み 咳や深呼吸をすると、胸に痛みを感じることもあります。
感染経路
マイコプラズマは、咳やくしゃみの飛沫を通じて感染します。学校や職場など人が多く集まる場所で特に感染が広がりやすいです。
診断
-
診断 症状や胸の音を聞くことで疑われますが、血液検査や胸部のレントゲン検査で詳しく確認します。
胸部レントゲン像の特徴
-
すりガラス様陰影(びまん性浸潤影) マイコプラズマ肺炎では、肺全体に広がる「すりガラス様陰影」と呼ばれる、白っぽくぼんやりとした影が見られることが多いです。これは、肺の細胞が炎症を起こしているために起こる現象です。
-
気管支周囲の浸潤 レントゲンでは、気管支の周囲に沿って白い影が見えることがあります。これを「気管支周囲浸潤」と呼び、マイコプラズマ肺炎では特徴的です。この浸潤は、肺の片側、特に下葉や中葉で見られることが多いです。
-
間質性肺炎像 肺の「間質」と呼ばれる部分に炎症が及ぶため、間質性肺炎の像が見られることがあります。これもすりガラス様陰影と関連していますが、細かな網目のような影が現れることが特徴です。
-
限局性または片側性の浸潤 他の細菌性肺炎では、肺の一部に局所的な浸潤影が見られますが、マイコプラズマ肺炎では、肺全体または片側性に限局した浸潤影が現れることが多いです。この点で他の細菌性肺炎とは異なる場合があります。
-
胸水が少ない 細菌性肺炎ではしばしば胸水(肺と胸壁の間にたまる水分)が見られますが、マイコプラズマ肺炎では胸水の発生が少ないことが多いです。これも区別する一つの手がかりです。
血液検査結果の特徴
1. 白血球数
-
正常~軽度上昇 マイコプラズマ肺炎では、他の細菌性肺炎に比べて白血球数が大幅に上昇しないことが特徴です。場合によっては、正常範囲内にとどまることもあります。細菌性肺炎では白血球数が顕著に増加することが多いのに対し、マイコプラズマ感染では軽度の増加か、ほとんど変化が見られないことがあります。
2. CRP(C反応性タンパク)
-
軽度上昇 マイコプラズマ肺炎では、CRP値が通常の細菌性肺炎よりも低いことが一般的です。CRPは炎症の度合いを示す指標ですが、マイコプラズマ肺炎では炎症反応が比較的穏やかなため、数値がそれほど高くならないことが多いです。
-
マイコプラズマ肺炎の治療
マイコプラズマ肺炎の治療では、特に抗生物質の内服治療が重要です。マイコプラズマは細胞壁を持たない細菌であるため、細胞壁を攻撃する抗生物質(ペニシリンやセフェム系)は効果がなく、細胞内部の機能を阻害するタイプの抗生物質が選ばれます。ここでは、商品名を含めて使用される代表的な内服薬について詳しく解説します。
1. マクロライド系抗生物質
マクロライド系抗生物質は、マイコプラズマ肺炎の第一選択薬としてよく使用されます。比較的安全で、副作用が少ないため、子供や妊婦にも使用可能です。ただし、近年は耐性菌が増加しているため、効果が見られない場合には他の薬剤に切り替えることがあります。
主な薬剤:
- アジスロマイシン(商品名:ジスロマック®)
- 服用方法:1日1回、500mgを3日間服用。または、1回500mgを1日目に服用し、その後250mgを4日間服用する方法もあります。
- 特徴:1日1回の服用で済むため、服薬の負担が少ないです。軽度から中等度のマイコプラズマ肺炎に広く使用されます。
- クラリスロマイシン(商品名:クラリス®、クラリシッド®)
- 服用方法:1日2回、200mg~400mgを7〜14日間服用。
- 特徴:マイコプラズマに対して有効ですが、アジスロマイシンよりも服薬回数が多くなります。
- エリスロマイシン(商品名:エリスロシン®)
- 服用方法:1日4回、400mgずつの服用。
- 特徴:歴史が古く、現在は副作用(特に胃腸症状)が強いため、あまり使われませんが、場合によっては選択されることもあります。
耐性菌の問題
近年、特に小児のマイコプラズマ肺炎において、マクロライド耐性マイコプラズマが増加しています。そのため、マクロライド系抗生物質が効果を示さない場合は、他の薬剤に切り替える必要があります。
2. テトラサイクリン系抗生物質
テトラサイクリン系は、特にマクロライド耐性のマイコプラズマ肺炎に対して使用されることが多いです。大人に使用されることが多く、子供や妊婦には避けられることが多い薬です。
主な薬剤:
- ドキシサイクリン(商品名:ビブラマイシン®)
- 服用方法:1日1〜2回、100mgを服用。通常7〜14日間続けます。
- 特徴:耐性菌にも有効で、消化器系の副作用が少ないのが特徴です。服用時は、十分な水分を摂ることが推奨されます。
- ミノサイクリン(商品名:ミノマイシン®)
- 服用方法:1日2回、100mgを服用。通常7〜14日間続けます。
- 特徴:同じテトラサイクリン系で、マイコプラズマ肺炎に有効です。光線過敏症(紫外線への過敏反応)に注意が必要です。
3. ニューキノロン系抗生物質
ニューキノロン系抗生物質は、マイコプラズマ肺炎の治療において、特に成人に対して使用されることが多いです。マクロライド系やテトラサイクリン系が効果を示さない場合に選択されます。小児や妊婦には使用されないことが一般的です。
主な薬剤:
- レボフロキサシン(商品名:クラビット®)
- 服用方法:1日1回、500mgを服用。通常7〜14日間続けます。
- 特徴:呼吸器感染症に広く使われるニューキノロン系抗生物質です。腱炎や腱断裂のリスクがあるため、運動時に痛みを感じた場合はすぐに服用を中止し、医師に相談する必要があります。
- シタフロキサシン(商品名:ラスビック®)
- 服用方法:1日1回、100mgを服用。通常7〜14日間続けます。
- 特徴:特にマクロライド耐性マイコプラズマに対して効果的です。ニューキノロン系の中でも新しい薬で、光線過敏症のリスクがあるため、日光に対する注意が必要です。
- ガレノキサシン(商品名:ジェニナック®)
- 服用方法:1日1回、400mgを服用。通常5〜14日間続けます。
- 特徴:呼吸器感染症に対する適応があり、耐性菌にも効果が期待できます。マイコプラズマ肺炎の治療にも有効で、服用が1日1回で済む点が利点です。
まとめ
薬剤系統 | 主な薬剤名 | 商品名 | 服用方法 | 服用期間 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
マクロライド系 | アジスロマイシン | ジスロマック® | 1日1回500mg | 3〜5日 | 第一選択薬。子供や妊婦にも使用可。 |
クラリスロマイシン | クラリス®、クラリシッド® | 1日2回200〜400mg | 7〜14日 | マクロライド耐性が増加中。 | |
テトラサイクリン系 | ドキシサイクリン | ビブラマイシン® | 1日1〜2回100mg | 7〜14日 | マクロライド耐性菌に有効。 |
ミノサイクリン | ミノマイシン® | 1日2回100mg | 7〜14日 | 光線過敏症に注意。 | |
ニューキノロン系 | レボフロキサシン | クラビット® | 1日1回500mg | 7〜14日 | 腱炎・光線過敏症に注意。 |
シタフロキサシン | ラスビック® | 1日1回100mg | 7〜14日 | マクロライド耐性マイコプラズマに有効。 | |
ガレノキサシン | ジェニナック® | 1日1回400mg | 5〜14日 | 耐性菌に効果あり。 |
マイコプラズマ肺炎の治療には、主にマクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生物質が用いられます。耐性菌の出現に応じて、適切な抗生物質を選択することが重要です。
新宿・東新宿・大久保の「呼吸器内科」「内科」「耳鼻咽喉科」なら「新宿内科耳鼻科クリニック」へ
https://higashi-shinjuku-cl.com
難治性喘息、標準治療では息苦しさ・咳が収まらない。。。生物製剤という選択肢。
喘息のコントロールが上手くいかなくて困っている方は少なくないと思います。
難治性喘息(難治性喘息)に対する治療は、一般的な喘息治療よりも複雑で、複数のアプローチを組み合わせることがよくあります。ここでは、難治性喘息の治療に関する主要な戦略をいくつか挙げます。
薬物治療
- 吸入ステロイド薬: 基本治療の中心であり、定期的に使用することが重要です。適切な用量と使用方法が効果を最大化します
- 長時間作用性β2刺激薬 (LABA): 吸入ステロイド薬と併用されることが多いです。
- 抗コリン薬(LAMA): 特にCOPDの治療薬として知られていますが、難治性喘息の場合には有効なこともあります。
- ロイコトリエン受容体拮抗薬 (LTRA): ロイコトリエンという炎症物質を抑える薬で、喘息の症状を緩和します。
- テオフィリン徐放製剤: 気管支を広げる効果があります。
- 生物学的製剤: 抗体製剤などが含まれ、特定の炎症経路をターゲットにします。
抗IgE抗体(オマリズマブ): IgEをターゲットにすることで、アレルギー反応を抑制します。商品名:ゾレア
抗IL-5抗体(メポリズマブ、レズリズマブ): IL-5は好酸球の増殖に関与しており、その抑制が喘息の症状を改善します。商品名:ヌーカラ
抗IL-4Rα抗体(デュピルマブ): IL-4およびIL-13という炎症メディエーターを抑制することで効果を発揮します。商品名:デュピクセント
非薬物治療
- 気管支熱形成術: カテーテルを用いて気道の平滑筋を加熱し、気道の過敏性を低下させます。
- 喘息のトリガー管理
A. アレルゲン回避: アレルゲンが引き金となる場合、環境管理やアレルゲン免疫療法が有効です。
まずは血液検査でアレルギー検査を受けましょう。当院では迅速41種類アレルギー検査器にて当日結果をご報告しています。現時点で特定のアレルゲンをお持ちであるかを認識することは喘息をお持ちの方には重要なことです。
環境因子の管理: 喫煙、空気汚染、化学物質などの環境因子をできる限り避けるようにします。
生活習慣の改善: 禁煙やアレルゲンの除去、ストレス管理などが重要です1。
B. その他のアプローチ
- 併存症の治療: 副鼻腔炎や肥満など、喘息を悪化させる要因の治療も重要です。
耳鼻科疾患の既往や症状がある場合は、当院では耳鼻咽喉科医に問題がないか診察をしてもらいます。
- 吸入手技の確認: 正しい吸入方法を習得することが効果的な治療に繋がります。
薬物療法における1-4までの治療は一般的に行われる標準治療といえます。個人の体質や生活環境などによって、特に吸入薬は多くの選択肢がありますので、1-4までの組み合わせをベストにすることでコントロールが可能なことが大半です。
それでもコントロールがつかない喘息患者さんが少なくないのは事実であり、現在注目されている治療法としては、5の生物学的製剤の併用する方法です。皮下注射をおおよそ月1-2回行うことでアレルギー反応を大幅に抑制することで、結果的に喘息のコントロールをつけることができます。
対象疾患としては、スギ花粉症や蕁麻疹においても行います。
アレルギーに対する従来の治療法ではコントロールできない方には大変有効で安全性にも優れた良い治療ですが、生物製剤のため薬剤が比較して効果であることがネックになっています。およそ3割自己負担の方で、月に1~2万円の自己負担が生じます(確定申告で医療費控除の対象になるため、その分の税負担軽減はあります)。
→当院では重症患者さんに対する、生物製剤の導入も積極的に行っておりますので、お気軽にご相談ください。